Q
先生の研究・活動を
教えてください
「自己」や「社会性(対人関係)」の発達に関心を持って研究を進めています。以前は「児童期」や「青年期」など特徴ある一つの段階に焦点をあてていました。たとえば児童の対人ネットワークにはどんな機能があるかとか、青年期の自己の発達にどのような要因が絡むか、などです。しかし次第に、人の一生を通じた発達のプロセスに関心を持つようになりました。今は「自尊感情」が生涯を通じてどのように発達し、変化していくのかに関心を持って調べています。高校生の皆さんには「自己肯定感」という言葉のほうが身近かもしれませんね。自分自身をどう大切にできるか、という、人の一生を支える大切なテーマだと思っています。
Q
この分野の面白さは、
どんなところですか?
発達心理学というと「子どもの心理学」と思われがちですが、発達とは生涯に渡る変化を指します。これまで私が研究調査で接した人たちは、下は小学生から上は70歳代・80歳代のお年寄りまでいます。
この分野の面白いところは、ひとの心を「時間軸」の中に置いて見ることができることです。たとえば一人の子どもでも、生まれてからこれまでの歴史を持っています。今その子に何かの問題行動があっても、そうなるだけの理由や背景があるのです。そして未来には、その子がこれから直面する発達課題が想定されます。課題に取り組む中で、子どもは柔軟に変化し、成長していきます。今の状態だけでなく、時間軸を見るのが発達心理学の面白さです。
授業紹介
「心理学研究法Ⅰ」という科目は、他の心理学系科目と少し違った学習に感じられるかもしれません。心理学系の科目の多くは、ひとの心についてこれまでにわかっているさまざまな現象や理論を学びます。けれどもこの科目は、心理学で解明される現象や理論の「構築のしかた」を学ぶのです。心理学という学問で、心にまつわる現象をどのように解明し、理論を作り上げていくのか。その手法・考え方を学ぶ科目です。
大学で学問を究めるということは、「今なにがどこまでわかっているか」を学ぶだけではないのです。「どのようにして研究を進めるのか」、その方法論も学びます。
メッセージ
自分自身のちょっとした心の動きに、いつも目を向けていてほしいと思います。今何か心が動いたな、何か心にひっかかったな。そんな動きや変化をていねいに感じてみてください。感じたものの正体はすぐにわからなくてよいのです。後からわかってくることも多いです。
心の動きをていねいに追う習慣をつけていると、大学で心理学を学ぶ時に、ひとつひとつの知識が実体験を伴ったリアルなものになりますよ。